【あとがき】『私の親友』(2023-01-31, #422491 monogatary)2023年01月27日 12時47分

『私の親友』 追記:公開終了しました。移転公開未定。
投稿日: 2023-01-31
ジャンル: 学園・青春
字数: 約2000字 (コンテスト制限字数によって)
お題「【ブルーミングボックス原作小説コンテスト】卒業」(出題日 2022-12-21)への投稿。

いわゆる中高一貫校の女子校を卒業間際で、東京の大学に進学予定の高校生が主人公。

コンテストの趣旨により、役者専業ではない人の朗読用として書いた。


以下 ネタバレ

メッセージは、「勇気」。
東京に引っ越して独り暮らしで暮らすことになる新生活へ踏み出すための「勇気」と同時に、
フツーの青春がないまま学生生活を過ごしていたとしても、卒業間際でも思い出作りはまだ間に合う、その一歩踏みだす「勇気」

だから本作は、春のこの時期の高校卒業予定者たちに向けた物語である。


本作の舞台は、作中に具体的な地名をあえて出さなかった。
だが、神戸の高校だということは、多くの人が判ると思う。

神戸にしたのは、コンテストで採用された作品を朗読する演者が兵庫県出身だからというだけではない。
むしろ、私自身が神戸や播磨および阪神圏を知っているからである。

本作では海をモチーフにし、主人公の名にも「海」を入れた。
私のいままでの作品ではめずらしく、(制限字数的に不利なのに)景色の描写がかなり多い。
主人公は高校に、東播(明石・加古川・高砂)方面から通っている。
海は、播磨灘や明石海峡である。瀬戸内海は穏やかで、乾燥して晴れている日が多い
もちろん今の東京にも海はあるが、同じような海、景色ではない
登場人物の氏は、鉄道駅名に由来している。


中高一貫の進学校、そして制服がなく私服という設定にした。
それはまず、こうした立場だと、
社会的に特殊扱いされたり、ねたまれたりしがち(いわゆるエリートと呼ばれて心理的に疎外されがち)だったりする、
そういう立場の人を主人公にして、こうした人も読者と同じだ、という親近感を与えたかった
から。

ただそうすると裏目に出て、作品をまともに扱われず拒絶されることになる、というリスクも含んではいた。
結果をみても、そうなった、と考えている。


しかし、進学校で大学受験に打ちこめば、
それはそれで「フツーでない」学生生活をせねばならなくなり、
また、犠牲にするものが出てくる。


本作の主人公は、父親がしがない会社員で片田舎に分譲マンションを買ったような、わりと一般的な生まれ。
(ちなみに、近年では姫路まで「ベッドタウン」が拡がり、新快速で姫路市内から大阪に通勤する人もめずらしくないそうだ。)
だからこそ、両親から期待を一身に背負わされている。
お金が中途半端にしかないから、遠距離の電車通学をせねばならない
普通の子なのだ。

学生時代に「青春がなかった」という人は多い。
部活動ばっかりだったとか、親類の面倒があったとか、さらには芸能活動をしていたという人も、普通にいる。
本作の主人公も、普通の子
である。

そして、生真面目で不器用だ。
器用にあれもこれもアグレッシブにこなす人ではない。
親の期待を背負って、受験勉強に集中しなければならなかったのである。

対照的に、「曽根さん」はアグレッシブだ。
そのアグレッシブで器用であるがゆえに、第一志望の京都大学に合格している、ということ。
二人の受験結果の差も、そのアグレッシブさ、「押しの強さ」によるわずかな差である。
また、ここで東京大学ではなく京都大学を志望したのも、
単に兵庫県(播磨)だから京都が近い、というだけではない。
京都大学という個性的で批判的なタイプの国立大学を選んだのであり、そこに曽根さんの人柄と意志があらわれている。

だが、その曽根さんもそれほどまでに交友関係が広かったわけではなく、
であるがゆえに、またその人柄が、遊びに誘った人選にあらわれているのである。


本作では、うらやみ・ねたみの人間関係は意識的に出さなかった
また、同じ志望大学・学部で争った関係もない。
登場人物たちは、限られた定員の奪い合いをしたのではなかったから、
落ちた人が受かった同級生を憎む理由はない
。無意味で、破壊的である。
作中の曽根さんと同様に、いや、そもそも私が、そういう話をしたくなかった。


電車通学をしていると、車内で性犯罪に遭うこともある。
さすがに東京ほどには混雑していない神戸方面の電車でも、起こっている。
東京の満員電車ではなおさらに厳しい。
だから、東京暮らしに恐怖と不安があるのは当然のことで、残念ながら、遭う覚悟が必要である。
本当はこんなことで辛抱させられるのがおかしいのであるけれど、現実問題として、闘わないといけない現状がある。
東京の大学に進学することの心配と、踏み出す「勇気」を話すうえで、
本作で車内犯罪の問題に言及することは必要
だった。


以上


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